第3場ベツレヘムへの旅です。お告げを受けて10ヶ月ほどが過ぎたのでしょうか。マリアとヨセフはベツレヘムまで行かなければなりませんでした。名前を登録するようにという勅令が出たからです。なかなか大変な旅なはずです。『ベツレヘム日報』のスギモト特派員に現地の様子を伝えてもらいます。「スーギモトさん、スギモトさん。(ももたろさんのリズムになってしまいました)ベツレヘムの様子はどうですか?」「はーい、こちらスギモトでーす。ベツレヘムは今大変たくさんの人でごった返しています。どの旅人も宿を確保するのに大変なようです。この二人はこの3つ星の宿に泊めてもらえたようですが、もうこれで満員です。」
「こちらの二人は、やや星の数が少ないこの宿にようやく泊めてもらえたようです。ここも満員になってしまったようです。マリアさんたち大丈夫でしょうかねー。」
「あっ、ちょうど今、マリアさんとヨセフさんの姿が確認できました。街が混雑している様子に驚いているようです。」
「ヨセフさんが、マリアさんのことを心配しているようです。優しいヨセフさん羨ましいです。」「スギモトさん、私的な感情は挟まないでリポートお願いしますよ。」「はーい。」
「だからこっちの宿は満員だって。」
「こっちも満員。」
「ヨセフさん粘りつよく交渉しています。」
「もう宿はここしかありません。なんとかしてあげたいです。頑張れヨセフさん。あっ、裏の方に連れて行かれました。たしか馬屋の方です。」「スギモトさん、そこ人が泊まれるんですか?」「人が泊まる場所はないと思います。もしそんなところで赤ちゃんが生まれたりしたら大変だと思います。」「心配ですね。」「だいぶ冷えてきましたが、私は今晩、馬小屋の前で徹夜で取材を続けます。」「ご苦労様です。」
「ただいま入ってきたニュースです。馬小屋で赤ちゃんが生まれました。男の子です。とても元気です。そして不思議なことに、夜空に明るく大きな星が輝き始めました。」
※(編集部蛇足)イエス様は、神の独り子なのに一番低いところにお生まれになった、これがクリスマスの底に流れるテーマです。
「一方、ベツレヘムの郊外でも異変が起きたようです。『荒れ野の風新聞』のタケダさん、聞こえますか?」「ざーっ、ざーっ、電波の状態が悪いようですが、もう一度呼んで見ましょう。タケダさん、聞こえますか。」「はーい、電波弱いですが聞こえています。」「ベツレヘムの野原の様子を聞かせてください。」「はい、私は今ベツレヘムから歩いて1時間ほどのところにある野原に来ています。夕方から気温が下がってきまして、現在気温は5度です。かなり寒いです。風は強めですが、空は晴れていて、満天の星が見えます。天の川もくっきりと見えています。ここでは5人の羊飼いさんが羊を守っています。」
「羊はどんな様子ですか?」「はい、ほとんどが寝ているようです。羊飼いのイブラヒムさんにお聞きして見ましょう。イブラヒムさん、冬の夜に羊の世話をするのは大変ですね。」(イブラ)「毎日のことですから、そんなに大変とは思っていません。ただこの時期は、草があまりなくてそれを探すのに苦労しています。夜はこうして焚き火を焚いて温まりながら火のそばで寝ています。お腹を空かした狼なんかが来ては困りますからね。」
羊飼いさんが、話し込んでいます。「今夜は寒いなあ、もっと火を燃やそうよ、星がとっても綺麗だよ。」
「今日の星空はいつもとどこか違うようです。星のまたたきが何か踊っているようにさえ見えます。」
「何か不思議な音楽が聞こえて来ているようです。」
「なんという清らかな歌声でしょう。穢れなき歌声とはこのことでしょうか。」「タケダさん、誰が歌っているのでしょうか?」
「天使の歌声です。羊飼いたちに、神様の知らせが迫って来ています。」
「天使が、羊飼いたちに、恐れることはないと言っています。」
「天使ガブリエルでしょうか。恐れるな、民全体に与えられる大きな喜びを告げる、と言っています。」
「もう一人は、今日ダビデの町にあなたがたのために救い主がお生まれになった、と告げています。」
「3人目の天使は、飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子があなたがたへの印であると言っています。」
「もう一人は、いと高き所では栄光神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ、と言っています。」
「タケダさん、羊飼いさんたちの様子はどうでしょうか?」「羊飼いは慌てて動き始めました。」
「みんなで救い主を見に行こうと言っています。私も羊飼いさんと一緒にベツレヘムまで移動します。」「ありがとうございました。」
※(編集部蛇足)こうして、一番初めにイエス様のお誕生を知らされたのは、身分の高い人々ではなく、その日その日を精一杯に生きて働く人々だったのでした。